小学校への入学や編入など、我が子は通常学級がいいのか、支援学級がいいのか…なかなか決まらずに頭を悩ませますよね。以前、教育相談の担当をしていた経験から分かることを、それぞれの学級のメリット、デメリットをご紹介しながらいろいろ書いてみます。
支援学級のメリット、デメリット
以前は障がい児学級というと「隔離された別教室」といったイメージが強かったようです。
でも、そんな見方が間違っていたことは、今では常識になりつつあります。
言葉の使い方も変わってきているのです。お気づきですか?
×普通学級→○通常学級(障がい児学級は普通の学級ではない、というイメージの払拭のため。)
×障害→○障がい(障がいは「害」ではない、という考え方から。)
×特殊学級→○支援学級(特殊な教育をする学級ではなく、支援をするための学級なのだ、という考えから。)
ちなみに「父兄」という言葉も今は使いません。
「父」や「兄」だけではなく、お母さんや家族も含めるからです。(授業参観などではお母さんの数が圧倒的に多い。)
子どもを保護する立場にある人、ということで「保護者」と呼びます。
ちょっと脱線。
「うちの子は支援学級の方がいいのでしょうか?」
新入学準備の時期になると、暗い表情で相談に来られる保護者の方が、毎年かなりの数います。
その心情を推し量るに「通常学級でも大丈夫ですよ。」と言ってもらいたい。
つまり「できれば支援学級入学は避けたい。」という意識が見え隠れします。
それが今の世間一般の感情なのでしょうね。
そんな時、私は、支援学級でのメリット例、デメリット例、通常学級でのメリット例、デメリット例を説明して、「ご家族でゆっくり考えて判断されてください。」とお話ししていました。
どの学級に入学するか、最終的には、保護者、家族、子ども本人の気持ちが最優先されるのです。
私の職場ではこんなことをお話ししていました。地域や学校、その予算、人数次第で違うので、一つの例としてお読みください。
支援学級のメリット
○大人数の中では落ち着かない、集中できない子どもさんのために、基本的にマンツーマン学習です。子どもさんに合わせたスピードで学習が進みます。学習内容は、通常学級と同じものであることが多いです。
○一人の空間が保証されます。支援学級には仕切りで区切られた小部屋がたくさんあることが多いです。そこで気持ちをクールダウンさせたり学習したりします。
○学級の人数が少ないので、担任と保護者の距離が近いです。毎日綿密に連絡を取り合い、その日の体調に合わせた学校生活が送れます。
○支援学級独自の行事があったりします。支援学級は他校とのネットワークが綿密です。近くの学校の先生と情報交換をしたり、一緒に活動したりします。自然に支援学級の子どもさん同士も仲良くなったりします。
支援学級のデメリット
●マンツーマン学習が多いので、いろんな考えに触れて、違う角度から考えたりする学習が苦手です。大人数の中で手を挙げて発表したりするのには慣れが必要です。
●支援学級以外の友だちを増やすために、いろんな場を設定してあげる必要があります。教室が違うので、自然に友だちの輪が広がることは難しいと考えておかなくてはいけません。いろんな学級と交流する場が必要です。
●いつもは静かな少人数で過ごしているため、全体に合わせて動くことが要求される学校行事などでは、いつも以上に疲れるみたいです。
●「通常学級から支援学級への編入」は割とハードルが低いです。しかし逆の「支援学級から通常学級への編入」は、ハードルが高く、難しいことが多いです。
支援学級と比べての通常学級のメリット、デメリット
ここでは、一般的な学校生活のことではなく、支援学級と比べての通常学級のメリット、デメリットについて考えてみます。
もちろん、全ての学校に共通することではありません。
支援学級と比べての通常学級のメリット
○人数が多い分、授業に幅が出ます。いろんな考えを比べる学習ができます。集団遊びもできるようになります。
○大人数になれているので、たくさんの人がいる場でも、生き生きと活動できる子どもさんが多いです。
○自分で友だちが選べます。人数が多いので、気の合う友達もいれば、苦手な友だちもいるのが普通です。誰と仲良くなるか、自分で考えて決めることができます。
支援学級と比べての通常学級のデメリット
●担任が、一人一人に目を配る時間が少ないです。集団に埋もれて目立たなくなる子どもさんも出てきます。
●団体で動くことを要求されます。一人一人の体調や都合はあまり配慮されません。
●待つ時間が増えます。人数が多いので仕方のないことですが…
通常学級の子どもが、支援学級児童のお世話係をするのって迷惑になる?
支援学級児童に寄り添って、いろんな手助けをしてくれる「お世話」係の子どもさんが、自然に発生してくることがあります。
これは周りにいる大人としては、とっても嬉しいことです。
障がいを持つ子どもさんにしても、すごく助かるし、心強いことです。
決して迷惑ではありません。
支援学級の子どもさんたちがどんなことで困っているのか、どんなことができて、どんなことができないのか、それは寄り添ってくれないとなかなかわかりません。
お世話する方にとってもいい経験になります。
実際、私が子供の頃、通級している子がクラスにいました。その子は比較的コミュニケーションもしっかりと取れているので当時は動きが他の子と少し変わっているんだな~くらいにしか捉えていませんでした。
その子は多くの友達と遊んだり、たまに私と放課後一緒に帰ったり遊んだりしていましたよ。もちろんその子その子で性格や発達障害の重度は違うと思うのですが、親が思っているより子供たちは柔軟に受け入れているように感じます。(学校や周りの環境によって違うと思いますが)
もちろん全ての学校が皆、同じだとは限られません。(中にはいじめになってしまうこともあるそうです)
ですが、私の周りの小学校では子供たちがしっかりとお世話係をしていると耳にしますよ。
電車好きな子が卒業する時に、在学生の子達が黒板に電車の絵を書いて送り出してくれたり、その子は上手に話すことはできませんが、友達と一緒にサッカーボールを追いかけていたという心温まる話も聞きました
これからの社会は、障がいのある方たちと手を取り合って、一緒に仕事や生活をしていく場が増えていきます。
そんな時、支援学級の子どもさんたちと一緒に過ごした経験は、大きな宝物になりますね。
ちなみに「お世話」係の子どもさんがたくさんいる学級は、おだやかで落ち着いた学級であることが多いですよ。
まとめ
我が子は、支援学級がいいのか通常学級がいいのか。
どちらかを選ぶように言われても、親としては悩み、苦しみますよね。
長年教育相談を受けてきましたが、「こうだ!」という判断基準は今でもよくわかりません。
経験上一つだけ言えるのは、専門家も交えて、納得いくまで、学校と相談することです。
意外と知られていませんが、今、各学校には「特別支援教育コーディネーター」といわれる先生がいます。
発達障害のある子どもさんたちの環境を整えたり、相談に乗ったりする先生です。
学校にお願いすれば、入学前から授業を見せてくれたり、何度でも相談に乗ってくれたりするはずです。
家族が抱えるにはあまりにも大きな判断です。一人で悩まず専門家の力を借りましょう。
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